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March 2008

五人姉妹/菅浩江

永遠の森-博物館惑星-の著者が送る短編集。
前に永遠の森についても記事を書いたと思ったのに、
記事をあさってみても出てこない。おかしいな。

「やさしさ」と「せつなさ」の名手という惹句は非の打ち所がありません。
ここ二日ほどちょっとセンチメンタルな気分だったのでいくつかは泣きかけた。
(いや、本当に珍しいことです俺にとっては。映画で泣いたのi am samだけだし)

ジャンル的にはSFなのですが、SF的ガジェットの重要度は低め。
ついでに言うと、結構先読みしやすい話が多い。
ただ、菅浩江の真価はそんなところにはなくて、
涙腺と情動を司る脳の一部をピンポイントで刺激する文章だと思う。

でも、「夜を駆けるドギー」の「逝ってよし」「オマエモナー」のやり取りには吹いた。
ハードカバー版が出たのが2002年だもんなぁ…。懐かしすぎる。

小川一水二冊

最近生活がものすごく不規則になってて、
眠れないのでものすごい勢いで本を読んでいます。

「妙なる技の乙女たち」をAmazonで注文したら値段が1460円。
送料無料になるにはあとちょっとだけ足りないので、
一緒に「疾走!千マイル急行」を注文してみた。

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沢蟹まけると意思の力/佐藤哲也

U.N.オーエンが彼女だったとしたら?をファルセット全開で歌ってたら、
流石に喉がおかしくなりつつあるepiですこんばんは。
いくら私の声が高めであるとはいえ、別にカウンターテナーではないし、
ましてカストラートでもソプラニスタでもないので最後のところは出ません。
あとファルセットでビブラートきれいに利かすのってどうすればいいんだろう。

ところで、なんであんなに着うた売れてるんだろうね。
確かにいい曲だけど、みんな原曲と間違えてるに違いない。

昨日ミノタウロスを読んだせいでしょうか、
軽い話が読みたくなってふと読んでみた。
いやまあ、何というか佐藤哲也節全開で楽しいです。
不条理な、ほとんど同じ文章の繰り返しをずっと読んでると起こる何か妙なテンションの高揚。
ひたすらにおかしな方向へと連なる物語と、
そもそもおかしな設定のはずが妙に常識を逸脱しない主人公。
そしてひたすらどうでもいい挿話。
全力でまじめにナンセンスな文章を続けられるともう笑うしかない。
あと作者の企業人時代の怨念がもろに出てるのがものすごい…
と言っても相当カリカチュアライズされてるけど。
やたら分厚いマニュアルとか、横文字を使いたがる重役とか、
何というか無駄にリアルです。

ミノタウロス/佐藤亜紀

ファンの端くれとして出た直後に買って読んで、久しぶりに再読。面白い。

主人公は徹頭徹尾どうしようもない人間で、後に相棒となる人物は輪をかけて酷い。

突如として起こった戦争状態で変わっていく少年というのはある意味「戦争の法」の同工異曲だけど、
こちらはもっと陰鬱で、救いがなく、そもそも救いようもないような話。
というか、こちらはそもそも変わってすらいないのかなぁ…単に順応しただけで。いやそれは戦争の法も同じか。

「東京に強制収容所を出現させてみたかった」の一言で東京をジョージ・オーウェル状態にする旦那も旦那なら
帝政末期ロシアの無法地帯を丁寧に描写して絶望的なストーリーを展開する嫁も嫁。

虐殺器官/伊藤計劃

新書サイズの二段組282ページが約5時間か…。読み始めると止まらないタイプの話だったということでしょうか。

ポスト9.11、アメリカはついに軍による要人暗殺を解禁した、という背景で、
主人公は妙に内省的な、暗殺を専門とする特殊部隊員という設定で話は進みます。

軍事関係の描写に関してはかなりの程度「ありそう」と思わせる出来。
特に民間軍事企業の描写についてはかなりリサーチされてるな、という印象。
MGSっぽいなー…というのはやっぱり作者が小島監督のファンだとか。やっぱねー。

最後に語られるメインテーマと思しきセリフについては、
現代の日本人(に限らないんだろうけど。多分)が心のどこかで感じていることをストレートに表現したな、
ということで私の中では高評価です。
なるほど、佐藤亜紀が問題作と呼びながら激賞するのも頷ける。
ネタバレを承知で書くなら「The Yellow MonkeyのJAMの例のフレーズ」に近いかも。
えー、反転部分は是非読んでから。読んでおいて損はないと思います。ラストの好みは分かれると思うけど。

Boy's Surface/円城塔

出た当初は「ちょっとなー」って感じで避けていたのですが、佐藤亜紀が激賞していたのを思い出し、
(というのもハヤカワJコレにはタイトルと惹句に騙された経験(シン・マシンとか)があるもので)
伊藤計劃の「虐殺器官」を買いにわざわざ電車で大型の書店へ。どうせ近所には置いてないだろうし。

…やはり書店は自分の求めるものを取り揃えていることがある程度予想できるところ、
あるいはある程度大きなところに行くべきですね。
円城塔の新作が出てることなんて全く知りませんでした。
これも歩きで行ける範囲では一番大きい某書店の品揃えが俺の好みからかけ離れてるのが悪い。

さすがにハヤカワJコレを二冊抱えてレジに行くというのはちょっと躊躇われましたが。
何というか、自分がビブリオフィルの仲間入りをしたんじゃないかという…いや、まだ大丈夫だ。
閑話休題。いい加減前置きが長い。

さて、当初の目的の虐殺器官そっちのけでとりあえず読了。
そんなに厚みがないのにやたら時間がかかったのはきっと、
・意味が理解できない
・そもそも意味がない
のどちらかでしょう。とりあえず技巧的な文章ではあると思うし、好きな文体でもあるけど。
聖書の創世記から力技で国産みにつなげたりするあたりは大好きです。
でも、もう二回くらいは読まないと意味があるのかないのかすら分からない文章が多すぎて。

ごくごく短い挿話を集めて一つの物語を作ったSelf-Reference ENGINEとは違って今回は完全な短編集。
とはいえ、一つ一つの短編が短い相互に関係があるのかないのか量りかねる複数の断章で構成されていて、
その意味では前作と似た構造ではあるかも。

今回は全編数学ネタをベースにした恋愛小説になっています。
いや、「恋愛小説」は自称であってこれが恋愛小説かといわれると首を傾げざるを得ないのですが。
まあ、確かにボーイ・ミーツ・ガールではある。うん。

とりあえず万人にお勧めできる類の本ではありませんが、無駄に饒舌でナンセンスな文体が好きな人は是非。

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